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大阪高等裁判所 昭和49年(ネ)27号 判決 1974年9月26日

京都市北区上賀茂梅ヶ辻町二六番地

控訴人

東良正博

右訴訟代理人弁護士

上西喜代治

上羽光男

東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

中村梅吉

右指定代理人

井上郁夫

金原義憲

中谷透

鬼束美彦

三上耕一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、原判決を取消す、昭和四五年三月一六日上京税務署長に対して提出された控訴人を申告者とする昭和四一年分所得税の修正申告書、同昭和四二年分所得税の修正申告書、同昭和四三年分所得税の修正申告書は、いずれも真正に成立したものでないことを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張事実及び証拠関係は、次に付加する外は、原判決に摘示するところと同一であるから、これを引用する。

控訴人において

1. 本件各修正申告書の控訴人名下の印影は、控訴人自身は普段あまり使用せず、控訴人の母東良ミツが保管していた三文判を押印したのであつて、控訴人には別に登録した実印がある。従つてこの印章は「東良」一般を表象する程度のものにすぎないから、この印影があることによつて、右各申告書が控訴人の作成に係るものと推定することはできないと述べ、

2. 当審における証人東良ミツの証言を援用した。

理由

当裁判所の認定(当事者間に争いのない事実を含む)及び判断は、原審と同一であるから、原判決説示理由を引用する。

控訴人は、本件各修正申告書の控訴人名下の印影は、控訴人の母東良ミツの保管する三文判によるものであり、控訴人自身には登録せる実印が別にある旨主張する。証人東良ミツの証言(第一、二審)によれば、右押捺された印章は、控訴人ら親子の家庭で用いている通常のいわゆる三文判で、特に控訴人のものと限つたものでないことが窺えるが、控訴人名義に使用する以上控訴人の印章と言うに妨げなく、他に登録せる実印がある故を以て控訴人の印章と言い得ないものではない。従つて本件各修正申告書の成立の推定を妨げるものではなく、当審証人東良ミツの証言によつても未だ右推定を覆えすに足らない。

以上控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、民訴法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤孝之 裁判官 林義雄 裁判官 楠賢二)

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